冷凍都市のくらし、アイツ姿くらまし

独立して5年経った個人事業主のあれこれ

田舎への身勝手な憧れ

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俺がまさにそうなんだけど、関東圏内で産まれ育った人って、例えば沖縄とか鹿児島とか北海道とか四国とか九州とか鳥取とかどっかの島とか、遠い田舎で産まれ育って思春期が終わったあたりで上京してきて今自分の目の前に立っているような人に対して、ある種の妄想的で押し付けがましい羨望を勝手に抱いてることってないだろうか?

 

例えば根っからの都会育ちの人間が「田舎」というワードを聞いた時には、頭の中でまず一番最初に思い浮かぶ田舎像ってのが、上の写真みたいな「君の名は」とか「ひぐらし」とか「サマーウォーズ」とか「ウォーターボーイズ」とか「僕の夏休み」とか「僕たちと駐在さんの700日戦争」とかに出てくるような典型的な昔ながらの風景なんじゃないかと勝手に思ってる。

 

で、そこで田舎なのになぜか芋っぽくはない見た目だけヤンキー気味のイケメン達、可愛い制服姿のJKたちと、毎日学校や田んぼ道の通学路ではしゃいだり、ハっとするくらいの青空が延々頭上に澄み渡っていて わたあめ雲がいくつも浮かんで太陽の光がサンサンと降り注ぐ中、見晴らしのいい海沿いのコンクリートの国道を、まだ彼女じゃないけどイイ感じの女の子とドキドキしながらチャリでニケツして走ってたり、夕暮れ時の縁側で扇風機に「ア゛~~ッ」ってする風呂上りの髪がまだ濡れたまんまの幼馴染(当然可愛い女の子)に向かって「オマエ、ガキノコロカラカワンネーナ」って呆れたように言って、男友達数人と原付き走らせてウェーイって言いながら隣町まで遊びに行ったり、砂浜を走り回ったり、何故かスキューバダイビングしたり、これまたちょっとだけ栄えた隣町で開催される花火大会にクラスメイトみんなで行ったり、ある日、恋愛に悩んだ夜は、家の近くの小山の頂上付近に広がった野原に行くと気持ちいい夜風が吹いていて雑草がザワめいていて、学校帰りの制服姿のままそこにドサって仰向けに倒れ込んで自分の両手で腕枕しながら夜空を見上げれば一面を見渡す限りの星々が輝いていて「ちっちぇ…俺ってちっちぇなぁ」とか自嘲的に呟くわけ。

 

で、卒業が見えてきた時期になると、ずっと一緒にバカやってきた仲間達も「オレ実家の跡つぐわ」とか「地元の会社に内定決まった」とか「夢の為に福岡の専門行くわ」とか色々進路が決まり、それぞれの道を歩むようになり、「みんな色々実は考えてたんだなぁ…俺だけ何も考えずに、このまま親の言う通り東京の大学なんか行っちまって…本当にいいのかな…?」とか独り言ちながら悶々として、3月になると別れを惜しみ最後に皆で行きつけの寂れたカラオケとか海とか神社とか色々地元回ってバカやってる時に、おもむろに偶然二人きりになった、ずっと片思いしてたあのコとか元カノとか現彼女とか、そーゆーのが最後にコソっと自分の耳元で何かを囁いてきて、そんで翌日、車両数の少ない電車の中で一人、なんとも言えないメランコリックな気持ちと、これから都会で待ち受ける未知の体験や出会いへの胸のトキメキを同居させながら、車窓の向こうに広がる田んぼや青空や家々を細めた目で見つめて、ふぅって短く息を吐くわけ。

 

わかる?俺、学生の時も社会人になってからも他人から「あ、自分田舎から出てきて~…」の一言を聞くたびに、毎回ここまで2秒で妄想して勝手に小刻みに震えてイってたからね。

 

「アーナニソレ…サイコウジャン」「え?何が?」「ナンデモナイッス」

 

冷静に考えたらお前いい歳してどんだけ「君の知らない物語」に憧れてんだよ、なにカラオケで恍惚とした表情浮かべながらホワイトベリーの「夏祭り」裏声で歌ってんだよって感じなんだけど、そっからさらに何年も何年も経って子持ちのオッサンになっても未だにそうなのだから、多分死ぬまでこうなんだと思う。

 

アレガデネブアルタイルベーガ…キーミィガァイタナーツハァ…

 

そんで数年ぶりに地元にある日突然一人で帰郷したらまず風景を見て いの一番に「ヘヘッ、ココモカワッテネーナ…」って呟いて、その日の夜はヒゲ生やして恰幅よくなった親友達と、これまたその内の一人が跡継いで経営してる居酒屋ではしゃいだり懐かしんだりして、宴もたけなわになった時に、ずっと片思いで好きだった子と、「アノトキ…ワタシ、○○クンノコト…スキダッタンダヨネ…」「エッ…」「…クスッ…○○クンノ…イクジナシ……ヤット…イエタ」とか、あの頃より更に超可愛くなってすでに子持ち人妻になった元カノと、「ヘヘッ、ブッチャケ ワカレタコト、コーカイシテルッショ?」「ショウジキ…スゲーコウカイシテルヨ…オマエ…マジデキレイニナッタナ」「チョ、チョットヤメテヨ…イ、イマサラッ…ソンナコト…ッ…イワレタッテ…」とか、そーゆーのがやりてえぇんだよおぉォォォォン。

 

いや分かってるよ、ネットで色々田舎生まれの人の実体験とか溢れてるし、自治会がメンドクサイとか、青年消防団が実質強制でクソブラックとか、人間関係がネチネチし過ぎてスゲー陰湿とか、そもそも若者なんてほとんどいないとか、なんでも共有しないとハブられる村社会とか、仕事ろくにないとか、あっても給料がものっそい低いとか、土地物件安くても車社会だからなんだかいって金かかるとか、遊ぶ場所なんてイオンしかないとか、舐めんなイオンすらねーよとか、コンビニまで車で数十分とか、まあ実際は色々と全然違うのは分かってるよ。

 

田舎に憧れを勝手に抱いて安易に移住する若者が1~2年でコレジャナイとか言ってノコノコ都会に出戻りするパターンが結構多いってのも知ってるよ。

 

ほんでもやっぱ自分の中で長年かけて理想化された田舎像、もっと正確にいえば「理想化された田舎における思春期像」ってのは、もうビクともしないぐらいに強固なワケ。

 

遠く離れた田舎に、自分の「ルーツや郷土愛」を明確に強く持っていて、そこには強い縁で結ばれた変わらない「仲間達」がいて、それでも居心地の良いそこから飛び立って、一人都会で新たな生活に臨むっていうところに「物語性」を感じて止まないワケ。

 

あー、ゴールデンウィークは田舎行きて―。島、島に行きて―。

とりあえず近場の伊豆大島とか新島とか行きてーーー。