冷凍都市のくらし、アイツ姿くらまし

独立して5年経った個人事業主のあれこれ

TRAMPOLINE GIRLと自問自答



NUMBER GIRL - TRAMPOLINE GIRL

 

高校生~大学生ぐらいの時期、NUMBER GIRLというバンドが大好きだった。

特に「TRAMPOLINE GIRL 」という曲が好きだった。

 

綿雲の浮く澄み渡った青空の下、

爽やかな風が吹く夏の田舎の風景を思わせる曲調の中で、

思春期の男が一方的に夢想する少女への憧れ、神聖さ、

そして、そこに自分は決して届かないという切なさ、

青臭い童貞さが歌詞の中に滲み渡っている。

 

それが、当時の自分にとって物凄くツボった。

GOING STEADYの「童貞ソーヤング」が日本中の

陽キャ中高生の心を鷲掴みにするもっと前に、ひっそりと、

まるでジブリ映画が日本人の心の宗教観や原風景を捉えて離さないように

陰キャなのに必死にキョロ充を演じていた僕の思春期バリバリ、

感受性ビンビンの心に突き刺さっていた。

 

最近の映像ものに例えるなら「君の名は。」をベースに、

もっと「秒速5センチメートル」寄りにしたような感じだろうか。

(※個人的には三葉はいつもの新海の性癖通り寝取られて欲しかった)

 

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思春期は、どうしてあんなに普段歩いている街や道端のいつもの風景に

鮮明な美しさや思い出や切なさやメランコリックさを感じる事が

出来たのだろう。

 

秋の夕暮時に自宅のドアを開けた瞬間に鼻腔の奥をくすぐる

金木犀の香りに、どうしてあんなに胸が締め付けられたのだろう。

 

青春は今この瞬間、自分の心の真ん中にある。

好きなあの子に届かない想い。もどかしくて、のた打ち回りそうだ。

でも、悲観的ではない。この胸の締め付けさえもどこか心地よい。

自分には、これから予想もつかない未来が広がっている。

 

「――…っと、バイトの時間、遅れちまう」

 

そう言って。お気に入りのデニムジャケットを乱暴に羽織ってブーツに足をねじ込む。

胸ポケットから取り出したラッキーストライクを1本口に咥えて。

どことなく、高揚した気持ち。足取りは、軽い。

 

今ふと思い出した、18歳~20歳くらいの平日夕方の自分の姿だった。

耳にひっかけたイヤホンからは、向井秀徳のシャウトが外に漏れ出ていた。

 

モテたいのにモテない青臭さとコンプレックスが胸の中心にあるのに。

まだ何も理想のゴールに届いていないのに。

そしてそれを他者に言語化・BGM化してもらって外部から再取り込みして、

誰にも伝わらない肥大化した自意識を剥き出しにして

気持ち悪いぐらいに自己陶酔に浸っているだけなのに。

客観的に大して悲惨ではないのだ。

 

高校生だから。あるいは大学生だから。

 

むしろ全力でモラトリアムを正しく謳歌できているとすら思いたい。

だって、こんなの許されるの、この時だけでしょ。

 

でも、大人になって。そんな自分のことなんて ここ10年久しく忘れていて。

ナンバガなんて22くらいから全く聞かなくなって。

 

その数年後に「相対性理論」や「ゲス極」に偶然、一瞬触れて、

なんだか一瞬だけあの頃の匂い、残滓みたいなものを感じ取ったけど、

感受性の衰えた僕の心は大してビクともしなくなっていて、

ふーん…っつって社会人生活に埋もれた。

 

嫁と出会って、付き合って、結婚して、子供が生まれて、

そして今、幸せなはずなのに外の通勤風景は一面灰色で、

あの頃はよかった、あの頃は輝いていたと心の中でポツリと囁く。

 

ああ、モテてぇなぁ。ああ、ドキドキしてぇ。

いや、別にモテなくてもいい。兎に角、とにかく絶頂したいんだ。何かで。

我を忘れたい。麻薬でぶっ飛んでしまうみたいに。

 

バカ言ってじゃねぇよ、もう大人だろ。しっかりしろや。

そうだね、でも今なにかしないと頭がおかしくなってしまうから。

とりあえず皆が寝静まった後に部屋で一人シコって射精しよう。

 

精液が吐き出されると同時に、全てがどうでもよくなって一日が終わる。

 

自分の中に眠る本心が、情けないほどに子供で許せなくなる。

勿論、外には一切出さない。

自分の心の奥、奥の奥だけで一人ひっそりと消化している。

 

※以下、引用 (自問自答ーZAZEN BOYS)

 


ZAZEN BOYS - 自問自答 (Soliloquizing)

 

 

分厚い大学ノートが鉛色に埋まってゆく 精神が浄化していく錯覚

 

内臓が体操してとても乱雑 ドドメ色に澄みきった俺の脳内色彩感覚

 

黒髪の思い出を美化 モラトリアムの地獄絵図をそんなに見たいか?

 

そんな少年性をいつまでたっても誇示しとる可愛気もクソもない

大人子供がはびこる気色の悪い集まりの中で

 

血色の悪い青みがかった無表情達の墓場で成仏できんユーレイどもの声も枯れ果て

俺は俺のこんな戯れ言につくづく呆れ果て

孤独の淵をさまよいDONZOKOの極みを見たような気になって

 

それでも俺は意地になって それでも俺は意地になって

それでも、それでも、それでも俺は意地になって

 

求め続ける、求め続ける、求め続ける 脳がユさぶられて頭ん中が

サァーっとするあのカンジを

 

それはどこにある?どこにある?どこにある?

 

心臓を鷲掴みにし引っ張り出してその鼓動を

そのまんまマイクかなんかで拾って

それに合わせてバンドの練習をしよう

 

脳内映像をビデオにダビングして

夜中に一人で酒飲みながら見よう

 

それは嘘に塗り固められた自己解放

自分が自分であるっちゅうことにギモンを

持とうそりゃわかっとる 自問自答

 

日曜日の真っ昼間 俺は人混みに紛れ込んでいた

強ーい日差しが真っ白けっけの店ん中に混ざり込んでいた


若い父親と小さい娘がなんか美味そうなもんにかじりついていた

笑っていた ガキが笑っていた

なーんも知らずにただガキが笑っていた

 

純粋な、無垢な、真っ白な、その笑顔は

汚染された俺等が生み出したこの世の全てを何も知らずにただ笑っていた

 

新宿三丁目の平和武装や 片目がつぶれた野良猫が発する体臭や

堕胎手術や 30分間25000円の過ちや

陰口叩いて溜飲を下げとる奴等や 徒党を組んで安心しとる奴等や

さりげなく行われるURAGIRIや 孤独主義者のくだらんさや

自意識過剰と自尊心の拡大や 気休めの言葉や

一生の恥や 投げやりや虚無や 

 

くりかえされる諸行無常

 

この世の全てを何も知らず この世の全てをなにも知らず

この世の全てを何も知らずガキが笑う

ガキが笑う この世の全てを何も知らず

 

行方知れず アイツは姿くらまし 行方知れず アイツは姿くらまし

冷凍都市のくらし アイツ姿くらまし)

くりかえされる諸行無常… よみがえる性的衝動…